稼働と愛おしさの間にあるもの…「永沼理善展」

Category : 現代美術シッタカぶり
自重3

自重2

自重4

【アートスペース虹】

この個展は去年だが、
当時、オーナーから作者の作品集を頂戴されるという思わぬ幸運にみまわれ、
時折、書棚から出しては眺め、出会った衝撃と美しさを回想しながら
是非どこかで再会できたらという想いから書かせていただくことにした。

作品自体は極めて“男子的食い付き”の良さを全面に出したもので
会場の中心には天井から細いワイヤーが下がり
深海を泳ぐ生物のようでも、空をゆっくり漂う飛行物体のようにも見えるそれは
アルミ合金や真鍮といったパーツ、あるいは切り出した面で構成されている。
このメカニズムは自重によって、一本のワイヤーにまつわる、
さまざまなカラクリをエネルギーを変えて、ゆっくりと落下していく仕組みになっている。
機械式時計のような複雑かつ精密な稼働型の立体作品をテーマに
作り続けている永沼氏は、制作にあたって大仰な表現でなく、
探る好奇心と動きに対してのシンプルな憧憬を抱いてくれれば、と言う。

ゼンマイが稼働の原因でもなく、そこにあるのは自らの重さだけである。
自重が原動力なのである。作品名も「自重力BOY」と愛らしい。
ひとつ一つのパーツを切り出し、規格にないギアは手づくりするという
徹底した作り込みは、その完成品を見るだけで、ため息が出るほどである。
先に述べた“男子的憧憬”を完璧に備えた、この造形物は同時に
どことなく生物的でもある。
天井からゆっくりとプロペラを回し、体内(?)のさまざまな
ギアがまるで見えない血液を送り出しているように
回転する様は、優雅であり、あたかも自立しているかのように毅然と
作動している。

自重5

壁には4つの「自重力Baby」たちが
斜めに架けた直線ギアの上を、てんとう虫がつたっていくように
これまた体内の微小なギアをせわしなく回転させながら降りていく。
当然放っておけば、最終地点まで到達し、息切れることとなる。
その度にオーナーが元の位置に戻し、また稼働させる。
放っておけないほどに愛らしく、そばに置きたくなる「生き物」たちだ。

金属の切り出しとギアという一見クールで淡々としたオブジェが
時として粛々を時を刻む有機体に見える時、
金属というマテリアルが息を吹き込まれ、
西日の中にまどろむ一匹の虫、一匹の空飛ぶ魚となって
何かを語りかけている、そんな風に思えてくる。
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Comment

素晴らしいの一言ですぅ。
それは、denさんの作品から受けとる感性が。
以前現代美術なる講義を取ったことがあって、その中で「物語は観客が作る」と言っていたのがよくわかります。作家が作品に込めたメッセージをどのように受け取ってもいいと。
そこから物語を作り共感してほしいと。
うぅ・・そうなんですよねぇ、きっと。この作品から生命的な何かを感じるなんてdenさんは凄い!! 私なんて・・(;´∀`) おバカやから、ん?よく磨かれてるなぁ~~、くらい ( ;^^)ヘ..
単純な美しさしか響かないってのは、頭の中も単純だからやろうねぇ
 

→葉菜子さん

僕がいつも思う、会場に足を踏み入れた瞬間のインパクトが画廊巡りの醍醐味であり、楽しみです。
元々、「磨かれた金属」フェチで、こういうのに遭遇すると心の中で泡がふつふつとつぶやきます。
実際に目にしたら、誰でも想像以上の「命らしきもの」を目撃することと思います。

この、いちばん上の写真、おなかの中にいる赤ん坊に見えません? じーーっと見てたら なんか言うてるような気になってきました。

→風さん

前のプロペラが回り、後ろの棒をゆっくり左右に振らし、降りてきます。なんか言われてみれば…
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