アルバムの中の彼。

Category : 浮世の「うっ!」
仕事場に電話。
全く聞き慣れぬ男の声。
「○○よぉ、元気?」
「……?」
「俺だよ、俺。ほら、中学ん時の同級生○○だよ。」
「……」

ほらっ、と言われてもねぇ…。
「前さ、池袋でやった同窓会とかさ、赤羽のとかさ、俺行ってないんだよな」
「ちょうどさ、脳梗塞やっちゃってさ…」
「で、今もさ、ほらっ、ちょっと聞き取りにくいだろ」
「まださ、小学生のチビがいるんだよな、俺。笑っちゃうだろ」
「リハビリは大変だったけどさ、今はさ、行政書士やってるよ」
「時々大阪へ行くんだけど、京都はいつも素通りだなぁ」

話せば話すほど何も浮かんじゃこない。
名前を聞いてもわからないから、顔が浮かぶわけもない。
「大変だったね」と返したところで、同情とか心配とかそんな感情は無い。
まだバス停で待っている人との話の方がリアリティがある。
(で、何の用件だ…?)

途切れ途切れのちぐはぐな話。
そりゃそうだ、中学生のエピソードなんて実にたわいのないものばかりで
同窓会で酒でも飲んで、あだ名で呼んで、
おぼろげな記憶の断片を繋ぎ合わせて、一生懸命思い出探して
そんなはしゃいでる気分の時にしか面白くもなんともない。
ましてや名前も思い浮かばない彼とは…。

「そんでさ、頼みって言うかさ…」
(ほら来た…何だ?)
「夏の参院選さぁ、K明党をよろしく頼むよ…」
(はぁ?)
「民主もさぁ、ほらちょっとやばいんじゃないかってさぁ…
でもさ、居るよな、同級生にさ、民主の議員…」

こうして10分ほども彼と話して、
結局「お互い身体には気をつけような」と
変な終り方で受話器を置いた。
中学の卒業アルバム(久しぶりに見たらやっぱりモノクロだった)を開いて
名前を探すがどこにも無い。(ほどに当時は生徒数が多かった)
やっと見つけた時、僕はもしかしたら在学中に
彼とはひと言もしゃべったことがない事に気付いた。

あちらはおそらく同窓会の住所録を見て、
片っ端から電話攻勢してるんだろう。
それはそれで、また大したものだ。僕には絶対できない。

誰なのか、わからないまま話をするのは
間違い電話の話の辻褄が合ってしまって
長々と話をして、実は全く関わりのない人だったよりも
どうも気が重く、もたれた感じになる。

アルバムでこちらをまぶしそうに見る坊主頭の(僕の中学はなんと全員坊主だった)
彼が、僕の中でしばらくすると、グラデーションになって消えていった。
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