「Tea for Two」劇団ソノノチ

Category : パフォーマンス見聞
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脚本・田辺剛(トランポリンショップ) 中谷和代(劇団ソノノチ)
出演:マキノナヲキ、廣瀬愛子、岡本こずえ 演奏 津久井道夫
(2012年11月25日、14時開演の回/壱坪シアター・スワン)

「お茶」とは縁のない生活を何十年もしている。
飲酒の執着とは裏腹に紅茶や日本茶…どれにもさして関心がわかない。
これはこのご時世、また街カフェ全盛の京都に於いては
誠に以て無粋な男と言わざる得ない、
我ながら…
その奥深さにたじろぐ、と言うよりもいわゆる鼻がきかないと言った方があっている。
気持ちのユトリの無さがそうした茶の粋人を羨む結果にもなっているのか。
喫茶店に入るという“習慣”が文字通り鼻っから無い。
時間の潰し方に喫茶という選択肢が全くない男である…やれやれ…

さていそいそと出かけたのはとある喫茶店。
ここは以前京都演劇フェスティバルで一緒に朗読劇をしたメンバーと
確か、何かの打ち上げで使わせていただいた喫茶店であった。
上の階はぎゅぎゅっと詰め込んで30人ほどのキャパの狭小劇場「壱坪シアター・スワン」で、
今回は階下の喫茶店をそのまま話の舞台として使い、
マスターと客とのカウンターでのやりとりを
後ろの10席ほどのテーブル席で見るという趣向である。

亡父が趣味で始めた喫茶店を継ぐべく脱サラした息子。
そして店の常連客である女。
息子のかつての同僚である女性。
(ここで女と女性と呼び方を分けたのに他意はないが
こうして思い返してみると正にそんな感じである)
週に何度かギターをつまびきに来る男性はBGMというところか。

息子の店について今後に於いてのアイデアをおせっかいに
ゴリ押ししてくる女。
なぜ会社を辞めたのか問いつめ、
売上げがあがらない(風采もあがらない)店なんかよりも
マンション経営でもしたらどうかと突飛な提案をもちかける同僚の女性。
実は息子の亡父と“おつきあい”があった女は
その置き土産であるこの店の将来をマジメに案じているのだが…

観客は8人。
たった8人の観客の目の前で何がしかの演出が粛々と“執り行われる”
(ここに初めて連れてきてくれた演出家のM氏は常に演劇とは祝祭であるという
自己の定説を旨としていたことからこの表現に及んだ)状況への参加は
そうそうあるものではない。
しかしそのささやかな驚きに値はする状況だけで成立できるほど
また演劇も甘くはない。

この中心的三人の会話劇で前半のマスターと常連女のかけあい漫才的な
それでいて決して“走る”ことの無いテンポと
いかにして日常会話の許容範囲内に収めるかという演出そのものは、
観客と舞台との間にある見えない轍を意識して作られる「演劇」とは
構成の仕方もその設定温度も自ずと違うだろう。
「フツーの会話」を「フツーの場所」で「フツーの人たち」がそれこそ、
フツーの僕たちの前で演じるのである。
それほどの進展も、クライマックスもここにはない。
フツーとはそんなものである。
マスターと女との関係性を観客に推して計らせ、
そこに表れる同僚との関係を女に計らせ、
やがてつまびらかに明かされる事実に観客を小さく驚かせ、
確かにそんな話もあるわなぁ、と思わせるスケール感がとても心地良い。

『Tea for Two』はトランポリンショップと劇団ソノノチAとBの
3パターンの役者陣で公演されるため、
時間とお金に余裕がある3回とも見られたという方もいるだろう。
8人の観客を話の中にささやかに取り込みつつ、
軽妙なアドリブも生かすこのようなシチュエーションでの演劇では
3人の登場人物同士の相性や年齢なども仕上がりに影響されるだろう。
できればあとひとつのパターンも見たかった。

誰も演劇で言うようなセリフなど普段は言わない。
演劇は本来見せるべきものでもない彼らの行動を
こちらから覗き見するようなもの。
誰にも見られたくないハラワタをさらけ出すようなもの。
だからこそ生々しさがそこに求められる。
しかも綿密に練られた脚本のもので…

今回の観客としての経験は何がしかの示唆を僕に与えてくれたように思う。
広いステージで目を凝らして見るものとは
明らかに違う役者の体温を感じる芝居であった。

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