傲慢が無欲を生み出す…「巨匠建築家 フランク・ロイド・ライト」

Category : ドキュメントDVD
ライト2

「現存するアメリカの建築家で最高」と評価されたライトはこう言う。
「国内でだと? 現存だと? 私は史上最高の建築家だよ。
別にこれは傲慢ではないと思うがね」

建築家ライトを余す所なく捉えた前編・後編合わせて110分の
興味深さが延々と尾を引く秀逸のドキュメンタリーである。
建築関連の専門用語などは一切出てこず、
主にライト自身の「確信」と「自身」と「遍歴」と「成果」を
さまざまなエピソードを交えて紹介する。
銀行、店舗、リゾート、教会、ビアガーデン、美術館、なんと
ガソリンスタンドまで作ったライト。
その長い人生においては強烈な個性と傲慢さから
ややもすると共感よりも嫌悪すべき人物として捉えられたきらいがある。

両親は不仲。父は家族を捨てて出奔。
母親は妊娠している時から彼を世界的に有名な建築家とするための
在らん限りの努力を惜しまない。つまり一番の理解者である母。
当然、強烈なマザコンであった彼がその後に出会う女性たちと
どう関わったかについて、淡々と描き、
一建築家としての人間性よりも、
色恋沙汰のスキャンダルにまみれた男の「モテ男君ぶり」を
これでもかと思うほどに見せつける。
男、または男親としては最低、しかし建築家としては天才。
この「天才」に惹かれてまた女性たちが次から次へと近づく。
母こそ理想の女性であった彼はしかし、自分の父親と同じく
家族を捨てて家を出る。また違う好きな女性と共に生きるために…。

しかし邪魔になる妻と子も居れば、救世主のような妻も居る。
仕事に邪魔は妻子はウザいのである。
50年前に捨てた最初の妻が亡くなった時、悲しむライトを見て
息子は言う。「あの時は見向きもしなかったじゃないか」と。
2番目の妻は暴力的、不安定、ドラッグ中毒という「最悪の伴侶」で
3番目の妻に対してストーカーまがいの行動と脅し、
あげくは殺すつもりだったというから凄まじい。

そして悪夢…それはシカゴの事務所で仕事をしていたライトの耳に入る。
自宅の執事を解雇(理由は不明)した3番目の妻。
その報復か、当の執事が家にガソリンをまいて火を放ち、職人や妻、幼い子まで
斧で殺すという惨劇が起こる。死者7人…ライトは生きた心地さえ無かったろう。

カーンの時にもお出ましになった建築家フィリップ・ジョンソンが
(あの時、彼はライトは怒りっぽいと語った)ここでも多いに語る。
天才と出会った時、その仕事や人柄にぐっとくるものがあるんだよ。
でも私は嫌いだよ、ライトは。
それは凄すぎて憎しみとか嫉妬とか誤解を自分自身に持ってしまうからさ。
昔、「ライトは時代おくれ。もう死んだ。なんて言ったことがあった。
ひどいことを言ったもんだ。彼はやっぱり天才だったよ」
正直フィリップ爺さんってなかなかいい。

ライトは成功→長い不遇→大復活→永遠の巨匠の変遷を辿ってきた
珍しい建築家ではないだろうか。
「長い不遇」それはヨーロッパからのモダニズムが勢いよく押し寄せ
時代がライトを必要としなくなった長い時代だ。
彼は強いストレスから、事務所を飛ぶハエに名前を付けた。
ミース、グロピウス、コルビジュ…当然、そのハエはライトに
叩きつぶされる。

肝心な建築物について触れる機会が無くなってしまった。
彼のエポックメーキングな「落水荘」「ジョンソンワックス社」
「グッゲンハイム美術館」については
それぞれに感嘆すべき芸術的造形であると共に
常に「建築は生活と共にある」という普遍的なテーマを
死ぬまで念頭に置きながら仕事をした男の
前向きで妥協しない、
たゆみなき勇姿が見えてくるような気がする。

死? 何も怖くないさ。死は最高の友達さ。
私はこれからも不死身だ。
若いということに何の意味もないんだよ。
だが若いということは“資質”であり、失われることは無い。
それが「不死身」ということだ。
だから私は不死身なんだよ。(インタビューに応えて)


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