「不埒なまぐろ」辻企画(第8回アトリエ劇研舞台芸術祭 招聘作品)

Category : パフォーマンス見聞
ふらち

脚本・演出:司辻有香
出演:大熊ねこ タケダナヲキ 田中浩之 
2013年1月20日14:00 アトリエ劇研

僕は辻企画の舞台を一度も見たことがない。
チケットを買った動機は、と言うと大熊さんと田中さんが出ていたから。
ただそれだけだったけれど、どうやらキャンセル待ちも出ていたとのこと。
司辻さんの言う “辻企画の怖さ” というものも知らないし、
誰からもどこからも何の情報もないままに見た。
舞台を見終わった後に「一体何を見たかったんだろう」と自問自答していた。
その後「一体何を見たんだろう」という至極真っ当な思いに浸ってしまった。
それも帰り道、延々と…

不倫がテーマであることに異論を挟む気は無いし、
どんな時代に於いても永久不滅な“現象”であるからして、
(どちらのスタンスでモノ言うか、という至って通俗的な、という意味で)
その泥沼のような、救いようのない、アリ地獄の様相を…という
(これもまた如何に僕が俗物か見事に物語っている)
そんな想像は軽く吹き飛んでしまったですな、冒頭から。

Twitterでの感想文をこれほど面白く“閲覧”できたことも印象深い。
そこには賛否というような短絡的な(僕はもっと極端な結果を期待していたのかも知れないが)
ものでは語れない“それぞれのもどかしさ”があって、
これこそ言葉数に制限のあるTwitterならではの面白さだった。
と、話がそれてしまった…。

冒頭に何を予測するかはともかくとして、
先のもどかしさとは詰まる所、不可解な愛憎をどう肉体を以て、セリフを語って、
演劇として立ち上げられるかという一点に集中している。
二人の男性のオールヌードを“話のネタ”として取り沙汰するのが下世話だとしたら
元からこの演劇は成立していない。
だって不倫以上「下世話に深い」確信的関係はない(他に挙げろと言われれば「結婚」か)からだ。
どちらも折った紙の両側に位置していると思える。

ヌードの必然性はカラダが何かに反応してこそ意義があるべきで
やがてささやかな驚きは「カタチとしてフツーなもの」に変化していくものだが、
途中で性行為的な動きをする男性への演出は、
この裸体を演劇のために“提供”した二人に対して失礼ではないか、などと思うのだ。
熱情的、扇情的な着衣の上からの愛撫や口づけ、あるいは
女性が男根に触れながら「ここも熱い」(温かいだったか…)とまで言わせておいて
この“ニセ”ックスは無いだろうと言う気分にさせられた。
やるなら本当にやってしまえ!と叫びたくなる。
(この行為が何かの比喩であるとも思えない)

「終演の力強い拍手が明らかに自分が劣等であると煽っているようで辛かった」と
Twitterにアップされた方の感想を演出家は果たしてどう受け取るのであろう。
「演劇のエゴ」は(があるとしたら)演劇表現とは表裏一体にあって、
結局わかるヤツは高級で繊細な感覚の持ち主で
分からんヤツにそもそも演劇を見て語る資格はないのだよ、と言われているようで、
これまた辛い。

女性のモノローグが却って本質を見えにくくしてしまった。
叫べば叫ぶ程、暴れれば暴れるほどに対峙する裸体と相殺してしまう。
地を這うような静謐な怖さを見たかった。
しかし時間が経つに連れて、これが「生」の力なのか、
もしかしたら断片的な言葉をリズムになぞらえたダンスに見えたりして、
パフォーマンスというやたらレンジの広い見立てのもと、
視点をずらすとそれなりに面白い作品だった。
ただ、もっと布団やシーツや枕を小道具として有効に使い、
シーツに影絵のようにゆらめく演出があっても良かったと思うのは
やはり劣等な人間の考えることなのだろうか。

終演後に“素”として観客に礼をする当たり前な儀式そのものが
何とも間が抜けた様相に映ったのは僕だけか。
むしろくしゃくしゃになったシーツと布団が
愛や憎しみの残滓のように横たわっていたままに、
俳優たちはそこには居ない、という設定の方が良かった気がするのだが…。
これもまた劣等な…いやこの辺でやめとこう。
32歳の女性演出家が見せた「不埒さ」は謎のままである。

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