「偉大なる生活の冒険」劇団ケッペキ2012年度新人公演

Category : パフォーマンス見聞
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2013.2.16 → 2.17【京都大学吉田寮食堂】
作:前田司郎
演出:矢島 亮

元カノのアパートに転がり込んでる30歳のニート。
その元カレを真剣に追い出す風でもない元カノ。
ザリガニを飼うニートの男友達。
昔レスリングをしていたというザリガニの彼女。
3年前に亡くなったニートの妹。
登場人物はこの5名。

元カレ(これも微妙)に対しては一見冷たい対応をとる元カノだが
さりとて真剣に追い出す風でもなく、
自分はバイト先のスーパーの上司と不倫をしている。
この二人の関係そのものが、確かに「生活の冒険」と言えば言えなくもない。
彼女にとってこのニートの存在はそれほどウザくもなさそうで、
つまりは日常の憂さを晴らす相手とでも言うのか、
この見るからに(この役者の風体にぴったりすぎて何も言えない…)
冴えない男の「のれんに腕押し」状態の対応に徐々に慣れてきて、
やがてこの男の魅力的な人格?と「こういう風に生きることができたら、
こういう考え方で生きられたら」と思い込まされてしまう自分が居たりする。
ストーリーの流れそのものはごくごくゆったりとしていて、
吉田寮食堂ならではの冷蔵庫劇場(あるいは罰ゲーム、あるいはイベント)かと思うばかりの
寒さの観客席には、この“間”が正直キツかった。
あまりの冷え込みに尿意を催し中座する年配氏もおられるほどであった。
とにかく驚いたのが舞台美術。
いわゆる舞台というものがなく、観客席の前に四畳半(か三畳か)の
部屋があっけらかんとあるだけである。
しかし細部にわたって細かな生活感、匂うほどのバタ臭さを醸し出し、
客入り前からすでに万年床に寝転んでゲームに興じるニートの
浪費時間が等身大で観客の手元に転がり込んでくる。
これは舞台に他の視覚的要素を一切持ち込まなかった(持ち込めなかった)ことによる
この芝居最大の効果だったことは確かだ。
上手(かみて)は無い。
そう、普通アパートの入り口なんて一カ所だ。
当たり前のように僕たちはその部屋を芝居という手段によって
覗き見させられているわけで、この狭さゆえの効果というものも痛快に体感できた。
この舞台は元カノの部屋になり、妹が訪ねてくるニートそのものの部屋にもなる。
妹が亡くなったことへの一見サラリとしたニート青年の反応も妙に切ない。
団塊世代は(というか僕にも痛烈に心当りのある)つかの間の
センチメンタルジャーニーを楽しまれたことだろう。
いつの時代にも居る人たちと、在る現象の一つにすぎない話だけれど、
僕は「大学演劇の新人公演」という枠で見ることはしなかったし、
そのこと自体は僕にはあまり関係ない。
原作は第137回芥川賞にノミネートされた「グレート生活アドベンチャー」は
この脚本の前身となった前田司郎の小説。
前田司郎は1997年に劇団「五反田団」を結成。現在も活動中である。
劇団ケッペキは京大公認の演劇サークルだが他大生も多数在団している。
今回も京都府立大生や京都女子大の1回生が演じている。
50人ほどが在籍している大所帯の劇団で団員だれでもプロデュースできる制度を採用している。
五反田団なる劇団のオリジナルを見てみたい衝動にかられるのは僕だけではなかろう。

省みれば僕もかつてこのニートとさして変わりない生活をしていたではないか。
若気の至りとは言うが、それはそれぞれの年齢につきまとう、それぞれの至りの
ごく一部分の時間を差すのではないか。
今でもそれほど進歩も進化もしていない自分を薄く笑ってみる瞬間があってもいい。
溌剌とした演技は溌剌とした演技として見ようと思う(おこがましくも)。

ふと思った。
元カノがバイト先でのエピソードに、吹き出しながらニートに伝えるシーンがある。
可笑しくてしょうがないという“演技”は確かに難しいことがわかる。
それだけならバカ笑いでもいいが、
それを相手に伝えるのは実はもどかしいほどに難しいものなのだ。
これがもし、ラボであったなら永遠とも思えるダメ出しが出たことだろう。
泣けるほどに笑える話はそうそうないのである。
これがいろんな劇団で取り沙汰されるにせよ、ここはしっかりと演じて欲しいと
またまた勝手にシッタカブリアンしたのであった。

芝居の途中、効果だと思ったニワトリの雄叫びは
吉田寮で飼われている“それ”たちであった。
あな恐ろし吉田寮よ。

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