「 村川 拓也 〜 エヴェレットゴーストラインズ 〜 」

Category : パフォーマンス見聞
む

2014.10.2〜10.5 【 京都芸術センター講堂 】

「演劇は嘘である」といきなり始まると
とりつく島もないのですが、
私たちが見ている演劇は決してドキュメントではないのです。
もしドキュメントの要素を探すとすれば、
役者が演じている瞬間は観客にとってのドキュメントである、ということですか。
役者は渡された台本を読み、役づくりをし、ブラッシュアップします。
演出家は「あるべき役」について(多分)延々と説明し、ダメ出しをし、
あげくの果てに灰皿を投げる(かも知れません)。
インプロと言われる即興劇も
あくまで舞台上のやりとりが即興であるということです。
観客からお題をもらったり、あるキーワードによって
役者が詰まる所、演じるのです。
そして登場人物が設定されているところから
これも厳密にはドキュメントの要素は見当たりません。

村川さんはドキュメンタリーの映像作家としての出自がありますから
舞台作品への反映のされ方も他の演出家とはスタンスそのものが違います。
僕は残念ながら前作の「ツァイトゲーバー」を見ていません。
今でもチャンスがあれば見に行きたい作品です。
解説にはこの代表作よりも更に不確実性をを強く打ち出した作品とありました。

舞台上には立ち位置の目安となるバミリしかなく、
小道具などは出演者が持ち込みます。
この“出演者”が実は、ここに来るか来ないかもわからないのです。
一公演につき、29人の人々に手紙を送ります。
WSによって予め出演候補となった人々です。
内容はと言えば本人が舞台上で“するべきこと”です。
簡単なものから、叫ぶ、走る、嘘の話をする、
果ては服を脱ぐといったものまであり、
それぞれの“出番”前には前方のスクリーンに
氏名、年齢、住所、職業、出演時刻、設定時間(多くは5分程度)などが明かされ、
パフォーマンスの説明が箇条書きで記されています。
出演者は、例えば客席脇の通路から舞台へ行き、
反対側へ去る、といった指示にもとづき、
この舞台を見ることはできません。

さてほぼ満員の会場。
予定された出演者のうち、5人ほどは来ませんでした。
これは前者のパフォーマンスを引き継ぐ内容のものもあるので、
当然、前者は舞台に置き去りになります。
僕が見た回では顔はダンサーの女性が舞台上を5キロ走り、
休憩する、といったものでしたが全力では走る彼女から伝わる
汗の熱気や激しく波打つ鼓動は、次の出演者によって
舞台裏へと引きずられていく“予定”でした。
しかし結局、彼(確か針灸師でしたか…)は来ませんでした。
ランナーは最後まで舞台の下手に置き去りにされたまま、
カーテンコールの際に村川さんと共に喝采の的になりました。
服を脱ぐという指示の彼女もダンサーでしたが
上手側の客席通路から全くの普段着でカバンを肩にさげて歩いて来ると、
中央で背を向いて、しばらく考えている様子でした。
意を決しておもむろに上衣を脱ぎ出し、完全にトップレスの状態になり、
しばらく(5分程度でしょうか)そのままの姿勢で
何事もなかったかのように着衣しました。
不思議な光景でした。
観客は予め指示された内容を知っていますから
(これは普段の演劇ではあまり有り得ることではないです)
どうのように行為するかということにささやかながら
思いを馳せます。
この観客の「想定」と「実際」との間にあるもの、
言葉にはしにくのですが、
「信じる」という儚い思いと、
あくまで出演者に判断を委ねるという「結果」との
スリリングな(フライヤーのヘッドにある「淡々とスリリング!」というのは大正解)
展開は、正に目からウロコが落ちたようでした。
終演後の拍手の大きさからも察することができます。

「舞台上に提示されるのは常に嘘=フィクションである」という言葉。
実際に見ている目の前の現実を脚本にもとづく虚構として見る演劇が持つ
二重性を村川さんは舞台上でドキュメントしながら
まさしく淡々としながらのスリリングを、
そう、村川さん自信が一番楽しんでいるのかも知れません。


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